思いを引き継ぐ
先日、ある方からフリマアプリを通じてバイクを購入しました。以前から、バイクの購入を検討しており、そのアプリやその他のサービスを通じて長い間探してはいたのですが、食指が動くようなものに巡り合えずにいました。そのような中、ある一台のバイクが目に留まります。掲載された写真やコメントから、オーナー様がそのバイクをとても大事に乗られてきたことがよくわかり、またコメントの中に「実際に現物を確認してからご購入下さい。すぐに購入しないでください」と書かれていて、オーナー様の誠実さまで感じました。出品されている方の中には、実際に現物を確認することを促すこと無しに「写真で確認できることがすべて」「返品不可」などとコメントされている方も見受けられます。様々な理由があるのかもしれませんが、売ったもん勝ちのような印象を抱いてしまいます。しかしこの出展者様からはそのような印象を抱くことが全く無かったのです。私はすぐに「現物を拝見したいです」とご連絡して数日後にその方のお宅に伺いました。
実際に現物を見てお話をさせて頂くと、私が想像していた通り、いやそれ以上にその方の愛情が込められたバイクだと分かりました。その場で購入する意思をお伝えして、3日後の引き取りでお願いしたのですが、本来であれば私がしなければならない手続きも、オーナー様がお手伝いしてくださり、3日後には滞りなく完璧な形でバイクを引き取ることが出来たのです。実はこの時に私は今までにない感覚を覚えます。それは、今日初めて運転しているバイクにもかかわらず、昔から私のバイクであったような、すでに私自身が長い間このバイクに愛情を注いできたような感覚です。私はこのバイクを手に入れた時、オーナー様のこのバイクにかけた愛情までも譲り受けたようです。この感覚は丹精込めて作られたものに出会ったときと同じだと気づいてとても幸せな気分になりました。
イギリス大使館に勤めていた叔父にこのような話を聞いたことが有ります。「新たに赴任する大使が親の代から何十年も使ってきた椅子をわざわざ日本までもってきていた、彼らにとってそのようなものこそ価値があるようだ」と。もちろんデザイン的にも気に入っていたのでしょうが、それと同じくらい家族が大切にしてきたということが彼にとって大事だったのでしょう。
私たちはなにかを購入するとき、実はそれに関わった人々の情熱や愛情、思いなども感じ取りたいと思っているような気がしてなりません。そしてそれを感じた時に、自らも愛情を注ぎ大切にしていきたいと思うのではないでしょうか。作り手側にいる私としては、末永く愛されるようなものをご提供していきたいと思っていますが、そのためには思いを込めることが大切なのだと今回のバイクの購入を通じてあらためて教えて頂きました。
素晴らしいバイクをお譲り頂けたこと、そして素晴らしいオーナー様と出会えたことを本当に嬉しく思います。